3.自転車のポジション調整について | トップ・プロ直伝ペダリング講座

3.自転車のポジション調整について | トップ・プロ直伝ペダリング講座

適切なペダリング動作を導き出すために、自転車のポジションは重要なファクターです。自転車のポジションをどのように決めているのか、プロサイクリストの見解を伺いましょう。テーマ3「自転車のポジション調整について」では、自転車の最適なポジションについて掘り下げて考えます。

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自転車のポジションの決め方とこだわり

――今回のテーマは自転車のポジションについてです。これもまた奥の深いテーマですね。ポジションをいじってみて最初は良い感じだなって思っても、少し経ったら「あれっ、何かしっくりこないなあ」なんてことがしょっちゅうあります。お二人は自転車のポジションをどうやって決めていますか。また、何かこだわりはありますか。

 

山本選手

僕は全くポジションをいじらないです。新しいバイクに変えても、前のバイクと全く同じポジションにしています。

もともと僕のポジション(サドル位置)って、大学を卒業するまで、結構低めで後ろに引いていました。ただそのポジションって、膝や腰に負担が掛かっていて定期的に痛みが出ていたのですね。故障とまではいかないけど、トラブルを抱えていました。

ちなみに当時のポジションの利点は、風を正面から受ける面積を小さくすることができるので、空気抵抗が小さくなることでした。

大学を卒業してプロになり、選手生活を続けていく上で故障に繋がりかねないトラブルを抱えているのも良くないと思い、ヨーロッパのチームに移籍してから、サドルを前に出して上へ上げるポジションへ徐々に変えていきました。

そうすれば当然、ペダルの踏み方も変わりますよね。より全身を使って踏み込めるようになり、痛みもなくなりました。そこからポジションは変えていません。

 

畑中選手

サドル高の定説、「股下×0.88」ってあるじゃないですか、ショップでバイクを購入した最初のポジションですね。多くの人はひとまずこれにしておけば問題ないです。

でも、ビギナーが自転車乗るのに慣れてくると、サドルを上げる人が多くいます。これは僕の見解ですが、高いサドル高は見た目が格好良いっていうのと、踏み込むポイントが自動的に上がるのが要因だと思っています。

4時や5時の位置から踏んでいたが、サドルを上げることで自然と3時の位置に近づいてペダリング効率が良くなる。これがサドルを上げたがる理由なんじゃないのかなって。

そこからその人たちは、さらにレベルが上り、体幹や引き足を使うことに意識が向きます。どうしたらもっと効率良くペダリングできるか模索するのですね。

面白いことに、もっとペダルを踏み込もう、体幹や引き足をもっと効率良く使おう、全身を使おうと意識が向くと、最初のサドル高に近づいて行くんです。

あるプロサイクリストの独自リサーチによると、プロの選手は一般のサイクリストよりもサドル高が低いそうですよ。どれだけ身体を使えているかを指標にして、サドル高を決めるっていう方法もありかもしれませんね。

ペダリング-ハンドル-ポジション-違い

サドル高(クランクの中心からサドルの座面までの長さ)は、股下の長さに「0.88」をかけた値が、一般的に適切とされています。※0.86がいいなど、諸説あります。

 

――畑中選手の考察は面白いですね。サドル高で自分のペダリングスキルが分かっちゃうかもしれない。素人感覚で高いサドル高=上級サイクリストっていうイメージを勝手に持っていましたが、一概にそういうものではないのですね。むしろ低めのサドル高が高いペダリング技術の現れかもしれない。選手それぞれに意図があると思いますが、サドル高とペダリングは密接に関係していることがわかりました。

ポジションは変えるの?ポジションを調整するタイミングとは

――ところで自転車のポジションって頻繁に変えるものですか。ポジションを調整するきっかけやタイミングがあったら教えてください。

 

畑中選手

僕は基本的にポジションを変えることはありませんね。チームが変わり自転車が変わっても、とりあえず前のチームで乗っていたときと同じポジションにします。そこから微調整をすることもありますが、やっても1、2mm程度かな。頻繁に変えるってこともしないですね。

僕の意見として、自分でどのポジションにしたらどの筋肉を使えるかを知っておくことが大切だと思っています。僕は長いこと自転車競技をやっているので、ポジションは固定しています(自分の中の最適解があります)が、これって経験によってどんどん変わると思います。

競技レベルや筋力、出場する種目に応じてどんどん変更していけば良いと思いますよ。

 

山本選手

僕も基本的にポジションはいじりませんね。先ほどもお話ししましたが、今のポジションに行き着いた理由も、痛みが無くて力を出せるポジションを追求したものなので。

そうそう、練習のときに身体が痛くなることが時々あります。フォームが悪いわけでもないのにおかしいなあって思って自転車をチェックしたら、あるパーツがヘタっていたのですね。それがポジションのずれの原因でした。頭の中で思っている以上に、身体がポジションを理解しているっていうことがあります。

人それぞれ骨格が違うので、共通のポジションっていうものはありませんが、体に痛みが出ないということを最優先にして、最低限のエアロポジションはキープしつつ、そこからよりペダルを踏み込めるポジションを追求して行くのが良いのではないでしょうか。

 

――お二人ともポジションを調整することはまず無いのですね。プロ選手ゆえに、培った経験から自分自身の最適解があって、今のポジションに行き着いたってことですね。私のような修行の身は、最適なポジションを探す旅がまだまだ続きそうです。

さて、今回のテーマでは、特別にもう一名からお話しを伺ってみたいと思います。2020シーズンまでKINAN Cycling Team(現KINAN Racing Team)で活躍をした、現Champion Systemスタッフの椿 大志さんです。どうやら自転車のポジションについてどうしても話したいことがあるとか。

 

椿

そうですね、昨年競技を引退して、トレーニング時間が大幅に減ってしまいました。身体の柔軟性と筋力がだいぶ落ちたなって、ペダリングをしていて感じますね。

それを補おうっていう意図もあって、現役時代よりサドルを低く、そして後方へ移動させました。後ろ乗りのポジションです。

後ろ乗りのポジションは、ペダルに体重をかけることが難しくなります。ですがペダルに力を加える時間を前のり(サドルが前方にあるポジション)の姿勢より、確保することができるメリットがあります。

ペダルに力を加えるポイントが後ろに移るので、極端な話、11時くらいの位置からペダルを踏み込むことができる感覚になります。それでも、あまりに体重をかけることが難しいので、それを補うためにステムが低く、遠くになりました。いわゆる「昔乗り」と言われるフォームになりつつあります。

でも、このフォームが今後変わる可能性も、もちろんあります。最近、シクロクロスを本格的に再開したのですが、ペダルに体重を乗せて、よりトルクを掛けることができるポジションにしたいなって思い始めています。

種目や、乗る自転車が持つフレームの特性によってもポジションっていうのは変わると思います。自分の身体と対話していく感じですね。

 

後ろ乗りで活かせるペダリング

  • 上死点付近の蹴り出しがしやすくなり、踏み始めが早くしやすい。
  • 上半身を低い姿勢に保つエアロフォームを取りやすい。
  • 重心を後ろに取りやすく、ステムが伸びてバイクの挙動を安定させやすい。
  • 回すペダリングを意識しやすく、ルーラーや大柄な選手に多い。

前乗りで活かせるペダリング

  • 体重をペダルに乗せやすい。
  • 上半身〜下半身にかけて、一番力が出せる角度に近づけられる。
  • 上半身の負担を減らせて、リラックスしやすい。
  • 体重を乗せて踏み込む動作を意識しやすく、クライマーやダンシングを多用する選手に多い。

 

――椿さんも意図があってポジションを変更したのですね。引退してからポジションが変わった経緯は、先ほど畑中選手が仰っていたことを、そのまま実行されていましたね。筋力や種目に応じてその時の最適解を見つけ出す。椿さんのお言葉をお借りすると、「自転車のポジションは自身の身体との対話」と言えますね。

 

「自転車のポジション調整について」まとめ

テーマ3では、「自転車のポジション調整について」お話を伺いました。お二人共、ポジションをほとんど変えることはなく、固定されていた事が印象的でした。

その要因は、豊富な経験に由来しており、自転車のポジションがどのようにペダリングに影響を与えるのか知識として蓄積しており、自身の最適なポジションを導き出した結果と言えそうです。

基本のサドル高は「股下×0.88」これをスタート地点にして、自身のペダリングスキルや筋力、競技レベルに応じて、最適なポジションを日々探求していく必要がありそうです。

ペダリング講座の最後のテーマは「ペダリングにまつわるトレーニング法について」です。