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KINAN Cycling Teamに所属する畑中選手と山本選手をお招きして開催した、『トップ・プロ直伝ペダリング講座 Powered By KINAN Cycling Team』。 2つ目のテーマである「良いペダリングとは何か」の前編では、平坦な道や登り坂でのペダリングについてお話をうかがいました。 後編は、アタックやスプリント、独走状態でのペダリングについてです。テーマに関連してスプリントの練習法やエアロポジションについても教えてくれました。 レース中のアタックやスプリントで意識すること ――もっとレースシーンにフォーカスした質問をさせてください。レース中にアタックを掛けるときや、レースの最終局面でよく見かけるスプリントのときって、何か意識をされていますか。   畑中選手 スプリントのときって、思いつき(反射的に、瞬時の判断)でポンポン動くので、練習でも敢えてその動きをやっています。練習するから身体がその動きを覚えて、レースでも最適な動きを反射的に再現することができます。 10秒の全力もがきは練習メニューとして普通ですが、皆さんにはぜひ「インナースプリントダッシュ」をやってもらいたいですね。どのようなメニューかと言うと、斜度3、4%程度の下り坂で軽いギア(インナーギア)にして行う、短時間のスプリントです。 1回5秒くらいでケイデンスは200rpm以上が目標です。「インナースプリントダッシュ」をやると、スプリントのときの身体の使い方を覚えることができますよ。   山本選手 僕はスプリンターというよりも、脚質はアタッカーです。平坦でも登り坂でも共通して、上半身は土台の役割です。テーマ1の「ペダリングにおける身体の使い方」でもお話ししましたね。 下半身で生まれる力を受け止めることができるように、腹筋、腕をガッチガチに固めて、上半身が動かないようにしてペダルを踏み込む。この動きを練習で身体に覚えさせます。 反射的にこのフォームにしたらこの動きをするっていうように、無意識のレベルで身体を動かせるようにします。ペダルを踏んだ時に生まれる反力を上半身で受け止めたら、次に反対の脚でペダルを踏み込むっていうイメージですかね。   脚質の特徴 ・スプリンター ダッシュや最高速度の速いライダー。レースだとゴール前の最後のスピード勝負に強い。 ・アタッカー 登りや平坦などを含む、起伏のある地形が得意なライダー。レースでは、様々な局面でアタックをしかけ、新しい展開を生み出す。 そのほかに登りが得意な「クライマー」やTTなど平坦な道での巡航スピートに自信のある「ルーラー」、万能で苦手のない「オールラウンダー」などがあります。   ――畑中選手にはスプリント、山本選手にはアタックに関するお話をうかがいました。そのシチュエーションで必要な動きを練習の段階で身体に覚え込ませるっていう点は共通していますね。レースで最高のパフォーマンスを発揮するためには、やはり練習あるのみなのですね。   独走状態のペダリングで意識していること ――もう一つ、レースシーンで意識していることについて教えてください。集団から抜け出して、独走状態のときって何を意識していますか。   畑中選手 独走のときは、ペダリング以外に他の要素が大きく絡んでくるから難しいですねぇ。ペダリングの綺麗さっていうのも確かに重要だけど、それとエアロを比較したら、僕の場合ですけどエアロを重視するかもしれないです。ライドポジションやコースの地形を気にして、ペダリングの優先順位はその次くらいに来るかな。 前提として、今まで説明した無駄のない、効率的なペダリングを実践していますけど。そこからさらに、独走用に特別ペダリングを変更しているっていうことはないです。ギアが少し重くなる程度かな。   基本となるエアロポジション。 空気抵抗を減らすためには、上半身と前腕部をできるだけ水平に保ちます。前からの風を受ける面積を少しでも少なくするためです。 速度が上がれば上がるほど、空気抵抗と必要なパワーは加速度的に上がります。このポジションに近づけると空気抵抗は減らせますが、パワーが出しにくくなります。 普段からエアロポジションでの練習もすることで、エアロポジション時のペダリング効率やパワーの低下を最小限に留めることができます。実際のレースでは、空気抵抗の削減とパワーの出しやすさの折り合いを状況に合わせて対応させます。   山本選手 独走している状態って個人TT(選手一ひとりが一定の時間差でバラバラにスタートして単独走によるタイムを競う競技)と基本的に一緒なので、速度にムラがないように、一定の速度をキープすることを意識します。 速度のムラはつまりパワーロス、効率の悪さに繋がるので。あと、重たいギアを結構使いますね。重いギアのほうが巡航速度は安定しやすいのでジワーって踏み込めます。 ケイデンスも若干落ちますね。ケイデンスが落ちると上死点と下死点を通過する回数が減るので、自ずとそこで必ず生じてしまうロスを抑えることができます。ケイデンスが上がるほど、パワーロスが大きくなりやすいです。 独走は人が回りにいる状況ではないので、自分の1番速いペースで走ることが最重要です。   ――お二人とも、独走のときはギアを重めにするんですね、しっかりと踏み込むことがキーポイントみたいです。 重たいギアを選択して、巡航速度を一定にすること(速度のムラをなくすこと)を意識すれば、自ずとパワーロスの少ない良い走りができそうです。   「良いペダリングとは何か」まとめ テーマ2では、「良いペダリングとは何か」ということについてお話を伺いました。良いペダリングを端的にまとめると、状況に応じてペダリングを使い分ける力と言えそうです。引き出しの多さとも言えますね。 ロードレースでは、刻々と変わるシチュエーションの中で、その状況に応じて最適な走り=ペダリングが要求されます。引き出しの数が多いほど柔軟に対応することができるので、レースを優位に進めることが可能になります。 良いペダリングとはつまり、引き出しの多さ。経験が物を言う部分も多分にありますが、テクニカルな部分は日頃のトレーニングで習得できそうです。 テーマ3では、「自転車のセッティングについて」という自転車のポジションについてお話をうかがいました。 「自転車のセッティングについて」は近日公開です。

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レースシーンにおいて、アタック、ヒルクライム、ダウンヒルやスプリント、そして集団での走行など、レース展開に合わせた走りが要求されます。 様々なシチュエーションごとに、ペダリングを切り替えるテクニックや引き出しの多さを総称して「良いペダリング」と定義します。テーマ2の「良いペダリングとは何か」では、シチュエーションに応じたペダリングについてのお話をうかがいました。 テーマ1「ペダリングにおける身体の使い方」はこちら 『トップ・プロ直伝ペダリング講座 Powered By KINAN Cycling Team』とは KINAN Cycling Teamに所属する畑中選手と山本選手のトッププロ2選手をお招きして、『トップ・プロ直伝ペダリング講座 Powered By KINAN Cycling Team』と題したペダリング講座を開催しました。プロならではの圧倒的な経験値に裏付けられた知見は、初心者から上級者まで多くのサイクリストにとって意義のある内容になっています。 トップ・プロ直伝ペダリング講座では、「ペダリング時における身体の使い方」、「良いペダリングとは何か」、「自転車のセッティングについて」、「ペダリングにまつわるトレーニングについて」、以上4つのテーマに分けて講座を進めてきます。 自転車を買ったばかりのビギナー層から、レースで上位を狙うシリアスレーサーにいたるまで、多くのサイクリストにとってペダリングは永遠のテーマです。 ペダリング講座では、ペダリングの基本動作をしっかりと身体で覚えるためのKnow Howをお伝えします。基本をしっかりとマスターして、走行状況や走り方に応じたペダリングができるようになれるような内容になっています。 今回は「良いペダリングとは何か」についてです。前編と後編の2回に分けて掲載していきます。 KINAN Cycling Teamについて © KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 2015年に発足。UCIコンチネンタルチームとして、UCIアジアツアーを中心に海外でも活躍し、日本国内ではJBCF(日本実業団競技連盟)のレースにも参戦する、国内トップクラスのチーム。和歌山県新宮市の株式会社キナンがメインスポンサーであり、チーム運営も行っています。 https://kinan.racing 講師の紹介 畑中 勇介 選手 2017年ロードレース日本チャンピオン 2021年KINAN Cycling Teamに加入 ジュニア時代から多くの国際大会で活躍。幾多のレースで培った豊富な経験に基づく、卓越したレース感と勝負を決する脚力を武器とする。 山本 元喜 選手 2018年ロードレース日本チャンピオン 2017年KINAN Cycling Teamに加入 アタックや逃げを得意とし、平坦から山岳までコースレイアウトを問わず戦える走力を武器とする。   平坦な道でのペダリング ――「良いペダリングとは何か」という、漠然とした、一概に答えることが難しいテーマだと思います。シチュエーション毎に細分化して、お話をうかがっていきたいと思います。まず始めに、平坦な道路を走行している時に意識することは何ですか。   畑中選手 平坦を走ると一言で言っても、集団の中で流して走ることもあれば、集団を引っ張るために出力を上げるとき、独走など色々なシチュエーションがありますよね。 平坦を走るときはペダリングの効率以外に、空気抵抗も大きく関係してきます。窮屈な姿勢、エアロポジションを強いられるシーンも多いです。   レースのときって、ペダリングの効率を追求することが最善とは言えません。乗車姿勢を窮屈にして出力が少し落ちたとしても、エアロポジションを取った方が、結果的にタイムが良くなることもあります。自身が発揮する出力と、空気抵抗のバランスを意識しています。 運動強度やシチュエーションに応じて、ペダリングとライドポジションを変えています。あと、走行中のフォームがずっと一緒だと、疲労が局所的に溜まるので僕は結構ポジションを変えていますよ。 走行状況に合わせてフォームを変えると、その状況に最適なペダリングがしやすくなります。 ①ハンドル下側を持つポジション 上半身と下半身の繋がりを意識しやすく、大きな力を出しやすいです。後ろ乗りにしても体重をかけられるため、クランクの高い位置から踏め始められます。無理なく上体を下げられるため、空気抵抗も下げられます。 ②ブラケットを持つポジション 基本となるポジションです。体が一番力を出せる関節の角度になるので、大きな動作のペダリングを意識できます。ペダルに体重を乗せやすいため、”踏み込む動作”を最低限に抑えつつ、大きなパワーを出せます。 ③ハンドル上部を持つポジション 上半身が起きるので、ゆっくり走ったり登りでリラックスして走ることができます。重心が後ろに下がるため、前乗りになってペダルを踏み下ろすイメージのペダリングになります。登りで重心が後ろに下がり、体重を乗せづらくなる時にも有効です。前乗りになるため、大腿部の前側を使いやすくなります。   山本選手 僕の場合、運動強度に応じてライドポジションを変えるように心掛けています。例えばインターバルトレーニングをしている時の話になるのですが、流して走っていて(レストの状態から)、何も意識しないで高強度のペダリングをすると、ポジションが悪いままなのですぐにキツくなります。 具体的に言うと、太ももの前側にある筋肉をメインに使っちゃうから、すぐに疲れてしまう。全身を連動させるように意識し直すと、徐々に楽になってきます。   集団にいるときや流しのときは、身体のどこかに変な力が入らないように、リラックスした状態を心掛けます。畑中さんと重複しますが、同じ筋肉をずっと使うと疲労が溜まるので、使う部位を変えるようにしています。あと、出力を上げるときやアタックの時に備えて体力を温存するようにしていますね。   ――ペダリングだけでなく、空気抵抗もパフォーマンスに直結する大きな要素ですね。レースではペダリングの効率はもちろん、空気抵抗にも目を向けてその都度、最適なライドポジションを取る必要があるのですね。 畑中選手と山本選手ともに、局所的に疲労が溜まらないように、ポジションや使う筋肉を変えていました。ロードレースは長丁場なので、いかに体力を温存するかという心掛けが、リザルトに大きく影響することが容易に想像できます。   登り坂でのペダリング ――平坦な道でのペダリングの次は、上り坂を走行するときに意識していることを教えてください。   畑中選手 登り坂を走るときって、空気抵抗の影響がほとんどなくなりますよね。空気抵抗がないので、平坦を走行するときよりライドポジションの自由度が高くなります。 僕の場合、空気をいっぱい吸いたいから上体を上げて、ライドポジションを高くとって高い位置からペダルを踏み込むようにしています。平坦の道では空気抵抗の影響があるのでできませんが、登りではポジションを気にすることなく思いっきり踏めますね。 極端な話、キツくなればなるほど「雑」と言うのか、ペダルに力を加えることにのみ注力します。あと、勾配に応じてダンシングとシッティングを使い分けますね。   高い位置で踏む、低い位置で踏むとは何かペダルを高い位置から踏み始められると、クランク1周あたりの踏んでいる時間を長くできます。パワー伝達にもムラがなくなり、ロスが減らせます。 ①ペダルの上死点(時計で表すと12時) ペダリングにおいて、どうしても力を入れることができない位置です。この位置でのロスをいかに減らせて効率を上げられるかは、意識と前後の動作で変わってきます。 ②2時の位置 体重を乗せてペダルを回し始められる位置です。この体重を乗せて踏める位置を、より12時に近づけらるように意識します。サドル高を上げたり、後ろ乗りにすることで踏み始めを上げられます。強度が上がって踏み始めの位置をもっと高くする必要が出てくると、前腿を使って蹴り出す動作も必要になってきます。 ③3時の位置 パワーが一番出せる体の角度であり、ペダルに一番体重が乗せやすく、クランクの円運動で一番効率よく力が加えられる位置です。この位置でパワーが出せるようにポジションを調整します。サドルが低すぎたり前過ぎたりすると、3時を過ぎたあたりで最大パワーを出すことになり、力をうまく推進力に伝えられません。サドルが高すぎたり後ろすぎたりすると、2時のあたりで真下に伝わる最大パワーが出されてしまい、ペダルを前に蹴り出す方向に力が逃げてしまいます。 ④4時の位置 この位置ではペダルに下後方への力を加える必要があります。しっかりと3時の位置で体重を乗せられていれば、ペダルが3時から6時(下死点)の間の位置でも体重を乗せることで下後方に力を加えられることになります。踏み始めがこの位置だと、下後方へ回ろうとするペダルに真下へ踏み込もうとしてしまうため、力のロスが生じてしまいます。 ⑤ペダルの下死点(時計で表すと6時) この位置では、ペダルに対して重心が前にあるため、踏み込みの動作は下後方に力のベクトルが働きます。体重を残しつつ上手に脱力させることで、反対側の上死点にある脚が踏み込みの動作を始められます。 ところでダンシングについてなのですが、多くの人が4時の位置から踏んでいます(ペダルに力を入れ始める)。ダンシングはシッティングの時よりも、自分が思っている以上にパワーの掛かり始めが遅れてきます。 「ペダリングにおける身体の使い方」でお話ししたように、僕はシッティングのとき、2時の位置くらいから踏み込むことを意識していると言いました。ダンシングは、それよりさらに前から踏む必要があります。 自分が思っている以上に前から踏むことを意識して、ようやく3時の位置で踏めている感じになるんです。...

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KINAN Cycling Teamに所属する畑中選手と山本選手をお招きして開催した、『トップ・プロ直伝ペダリング講座 Powered By KINAN Cycling Team』。 1つ目のテーマである「ペダリングにおける身体の使い方」の前編では、上半身の使い方や下半身との連動についてお話をうかがいました。 今回の後編は、一度は気になるであろう、ペダリング時の踵(足首)の固定についてと疲労時のペダリングのコツなどについてお聞きしました。 ペダリングでは踵(足首)を固定するってホント? ――少し横道に逸れてしまいますが、巷の噂で「ペダリングのときに踵(足首)を固定すべきだ」っていう話を聞くんですが、それってどうなんでしょう? 踵は動かないように意識したほうが良いですか?   山本選手 ペダリング動作では、踵の上下動が必ず起きます。ふくらはぎに力を入れて無理に固定すると、脚全体の自由度がなくなってしまいます。さらにふくらはぎに疲労も溜まりやすい。ペダリングの出力のメインは、先ほどもお話ししたように、お尻とももの裏の筋肉です。ふくらはぎも連動させるように使うので、僕は踵が上下動します。 例えばペダルを踏むときに、必要以上に踵が下がる(足首が背屈した状態)、ペダルが上死点に来て、それより上に行かないのに、踵を上げる(足首が底屈した状態)動作は、力の無駄遣いなので勿体無いです。 綺麗にペダルを回せていれば、踵の多少の上下動は気にすることはないと思います。   畑中選手 踵は固定した方が良いという考えは違いますね。元喜(山本選手)が言ったように、ペダルを踏む時に踵が下がっているっていうような人は筋力不足やポジションの悪さが考えられますが、「踵を固定」っていうのは違うと思います。動いても良いです。   ――踵(足首)の動きという、どちらかと言うとミクロな部分はそんなに気にしないでよさそうです。私のような一般サイクリストは、お尻ともも裏の筋肉を使って、2時の位置からペダルを踏むことに集中したほうがパフォーマンスが上がりそうです。 疲れたときでも効率よくペダリングしたい ――長い時間自転車に乗っていると、疲れてきてペダリングが何か悪くなってきた、効率落ちているなぁって感じることが多々あります。というか毎回そうなんです。 疲れてきても綺麗にペダリングをするためにはどうしたら良いですか?コツや意識していることってありますか?   畑中選手 トレーニングの一環で、ペダリングの効率やパワーを計測するマシンを使うのですが、効率の悪い動き、パワーロスに繋がる動きが分かります。レースのキツい時、脳裏にその時の動きが浮かんでくるんですよ。 動きを直そうっていう気づきがあると、やっぱりちょっとは変わりますよね。意識の問題になってくると思いますが、疲れてきた時ほど効率上げて何とかしたいと思いますよね。 個人的な話になってしまうのですが、僕は昔テニスをやっていたので右腕の方が長いです。右腕が長いので、シンメトリーにハンドルを握ると右肩が上がっちゃいます。 普段のサイクリングでは、右肩が上がらないようにしています。ですがレースの時、キツくなってくると自然と右肩が上がってくるんですね。それでバランスを取ろうとして勝手に頭が横に傾く。 自然とそういうフォームになっているのですが、考えてみると、パフォーマンスを維持するために、身体がキツい状況の中で1番力を発揮できる方法を知っているかもしれませんね。   山本選手 ペダリングの乱れって、それがケイデンスの乱れに、そしてホイールの回転のムラにつながりますよね。 それであれば逆説的に考えてみて、キツい時でも一定の速度でムラなくスーッとバイクを進ませることができていれば、ペダリングは乱れていなと考えることができると。なので、キツい時ほど、ムラのない一定の速度で走ることを意識します。 キツい時に綺麗にペダリングをしようと思っても難しいですよね、僕はできないので、速度を一定に保つ意識を持つようにしています。   ――サイクリングで疲れてくる状況、レースシーンに置き換えると、キツい状況でパフォーマンスをいかにして維持するかっていうところになると思うのですが、そのアプローチは選手によって違うのかもしれませんね。 畑中選手のように、自分の身体にあった楽なポジションを感覚的に体得するのか、もしくは山本選手のように意識的に効率の良いペダリングをしようと模索をするのか。山本選手が意識している一定速度を保つというアプローチはすぐに試せますね。   「ペダリング時における身体の使い方」まとめ テーマ1では「ペダリング時における身体の使い方」について、前編と後編の2回にわたって、畑中選手と山本選手にお話をうかがいました。 選手それぞれに独自の理論がありますが、自身の持つ体重や筋力を、いかに無駄なくペダルへ伝えて推進力に変換するのかが大切になります。 そのためには、お尻ともも裏にある筋肉を出力のメインにして、2時の位置からペダルを踏み始める。上半身はお腹に力を入れて固定し、パワーロスを極力減らすためのサポート役という意識が必要になります。 テーマ2では、「良いペダリングとは何か」というさらに一歩踏み込んだ、より実践的なお話しをうかがいたいと思います。

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KINAN Cycling Teamに所属する畑中選手と山本選手のトッププロ2選手をお招きして、『トップ・プロ直伝ペダリング講座 Powered By KINAN Cycling Team』と題したペダリング講座を開催しました。プロならではの圧倒的な経験値に裏付けられた知見は、初心者から上級者まで多くのサイクリストにとって意義のある内容になっています。 トップ・プロ直伝ペダリング講座では、「ペダリング時における身体の使い方」、「良いペダリングとは何か」、「自転車のセッティングについて」、「ペダリングにまつわるトレーニングについて」、以上4つのテーマに分けて講座を進めてきます。 自転車を買ったばかりのビギナー層から、レースで上位を狙うシリアスレーサーにいたるまで、多くのサイクリストにとってペダリングは永遠のテーマです。 ペダリング講座では、ペダリングの基本動作をしっかりと身体で覚えるためのKnow Howをお伝えします。基本をしっかりとマスターして、走行状況や走り方に応じたペダリングができるようになれるような内容になっています。 初回である今回は、「ペダリング時における身体の使い方」についてです。前編と後編の2回に分けて掲載していきます。 KINAN Cycling Teamについて © KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU 2015年に発足。UCIコンチネンタルチームとして、UCIアジアツアーを中心に海外でも活躍し、日本国内ではJBCF(日本実業団競技連盟)のレースにも参戦する、国内トップクラスのチーム。和歌山県新宮市の株式会社キナンがメインスポンサーであり、チーム運営も行っています。 https://kinan.racing 講師の紹介 畑中 勇介 選手 2017年ロードレース日本チャンピオン 2021年KINAN Cycling Teamに加入 ジュニア時代から多くの国際大会で活躍。幾多のレースで培った豊富な経験に基づく、卓越したレース感と勝負を決する脚力を武器とする。 山本 元喜 選手 2018年ロードレース日本チャンピオン 2017年KINAN Cycling Teamに加入 アタックや逃げを得意とし、平坦から山岳までコースレイアウトを問わず戦える走力を武器とする。 今回の講座では、適切なペダリング動作とは、「身体で生み出した力を、あますことなくペダルへ伝え、自転車の推進力に変換する動き」と定義します。適切なペダリングをするためには何を意識するべきでしょうか?   ペダリング動作で意識していること ――それではよろしくお願いします。 ペダリングの動作って、初心者から見たらただ交互にペダルを踏んでいるだけに見えてしますのですが、ペダリングという動作を行うときに、何か意識していることや気をつけていることってありますか。   畑中選手 「今自分が持っている力を、いかに楽をして、最大限に使えるか」っていうことを意識していますね。出力の時(ペダルに力を加える時)、自分の体重や筋力を無駄なくペダルに伝えることが大切です。 ロードレースは競技時間が長いので、例えば集団内で体力を温存しながら走行する時のように、いかに力を使わないで自転車を進めることが出来るかを考えることも必要になります。   山本選手 自分の場合、身長が低いっていうこともありますが、出力を脚だけに頼るのではなく、身体全体で発揮される力をペダルに伝えるように意識しています。 繰り返しになっちゃいますが、身長が低いと、脚で発揮される力だけでは勝負できない可能性があるんですよ。なので、いかに身体全体を使って大きな力を発揮するかが大切です。   ――なるほど。おぼろげながら学生時代、物理の授業を思い出しちゃいました。理論上、同じ筋肉量を持っていても、身長が高い人の方が発揮される力は大きくなりますもんね。 畑中選手も言っていたように、ロードレースは競技時間が長いです。ペダルを1回転させる動作の中にごく僅かなパワーロスがあったとしたら、それが競技時間に比例して積み重なっていくので、リザルトに影響することが想像つきます。 100発揮した力を、余すことなく100ペダルに伝えて、推進力に変換させる意識を持つことはとても大切ですね。 そして、身体全体を使っていかに大きなパワーを発揮できるか考えることも、パフォーマンスに影響を与えそうです。   ペダリング中の上半身の使い方で意識していること ――それでは具体的にどのようにして身体を使い、ペダリングしているのかを聞いていこうと思います。まずは上半身の使い方で意識していることがあったら教えてください。 畑中選手 僕は肩の使い方を意識しています。そもそもペダリング動作って右脚と左脚を交互に動かしますよね、それって身体の重心が左右に振れることになります。 言い換えると、その重心の揺らぎが自転車の推進力の元になると考えることができるんですね。肩を動かして、その重心の揺らぎを滑らかにさせる、サポートするイメージです。 自転車に乗っているとしましょう。 右脚でペダルを踏むと、右に重心が移動しますよね、左肩をクッと身体の内側に入れるように軽く動かして、移動した重心を身体の中心へ引き戻します。今度は左脚でペダルを踏むので左に重心が移動します、そうしたら右肩を動かす。 脚の動きに肩を連動させるんですね。自転車も身体の重心の揺れに併せて左右に振れますよね、それでも腕と頭は固定します。あくまでも肩だけ使うように心掛けています。 今話したことは基本となる部分です。 巡航くらいのペースならこれで問題ないですね、アタックのように強度が上がったら、初めて腕の力を動員させます。なぜかと言うと、アタックの時ってより強い力でペダルを踏みますよね、物理の話になりますが、ペダルを踏んだエネルギーと同じエネルギー量が自分の身体に返ってきます。 ①ペダルの踏み込み ペダルに体重を乗せながら、なるべく高い位置から踏み始めるようにする。 ②上半身の動き 肩を引き寄せることで、上半身をペダルを踏み込んでいない方へ移動する。 ③上半身と下半身の連動する力のライン 踏む力が大きくなればなるほど、このラインの幅も大きくなる。 ④重心の移動 上半身の振れで反対側に移動させた重心を利用して、反対側のペダルを踏み込む時に体重を乗せる。 つまり、踏む力が大きければ大きい程、重心の振れ幅も大きくなります。左右に大きく振れる重心を引き戻すために腕の力が必要になるって訳です。   山本選手 僕は上半身を「脚で発揮される力の土台」と考えています。上半身はブラさない、安定させる。それを意識することで、身体全体を使って力を発揮することができます。そして、力を発揮するための土台となる上半身は、走り方や発揮する力に応じて使い方や役割を変えています。 まずは巡航のように運動強度が低い時についてお話ししますね。お腹に力を入れるようにして体幹を固定し、肩回りはリラックスさせます。身体の中心部分が走行ラインに対してブレ過ぎていないように気をつけます。また、体幹が固定して安定するので、走行中に路面から受ける衝撃を吸収しやすくなります。 次にアタックのように出力を上げる、加速するときは、体幹はもちろん、肩回りと腕、身体とハンドルを繋ぐラインをがっちりと筋肉に力を入れて固めるようにします。感覚的な話になりますが、がっちりと固まった上半身で下半身に力を伝えるイメージです。   ――それぞれの独自理論が登場しました。トップ選手であっても、それぞれ意識することが違うんですね。 畑中選手が意識している肩の使い方って初めて聞いたのでとても新鮮でした。ペダルに加える力は、ほとんどが下半身の筋肉で発揮されますよね、上半身はその発揮された力を無駄なくペダルへ伝える、サポートの役割を担っていると考えることができそうです。 上半身の使い方の違いとライダーの傾向 ・肩を動かして重心のバランスを保つ方法(畑中選手) 臨機応変に最適な走り方の引き出しが多い人に多い。軽量系な人に多い傾向にある。 ・上半身をしっかりと固定する方法(山本選手) たんたんと一定ペースで走るのが得意な人や筋力が強い人、 タイムトライアル(TT)やレース時に独走のシチュエーションが得意な人、逃げ切りタイプのライダーに多い傾向にあります。 両方ともペダルを踏み込む力をペダルに無駄なく伝える方法です。どちらが正しいということはありません。分かりやすく理解できたり、共感できた考え方を取り入れていただければと思います。   ペダリング中の下半身の使い方と、上半身と下半身を連動させるために意識していること ――何だかペダリング時における上半身の使い方が見えてきました。 つぎに、出力のメインとも言える下半身の使い方について意識していることやすべきことを教えてください。さらに、上半身と下半身を連動させるために何か気をつけることがあれば教えてください。  ...

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